容疑者X
容疑者Xの献身 東野 圭吾 (著)
この小説は面白いです。偶発的な殺人事件を天才数学者の石神が頭脳を駆使して完全犯罪に仕立て上げる。これを天才物理学者の湯川が解き明かしていくというストーリー。物語の構造は単純ですが、トリックが凄い。まだこんなトリックが残っていたかと唸らせます。そこに純文学的な人間描写も織り交ぜた純愛ミステリー。石神の「答えが合っていることを証明することと、答えを見つけ出すこととはどちらが難しいか?」という問いが印象深いです。最近読んだ小説では一番ですね。なお、この作品、2005年「このミス」一位であり今回の直木賞も受賞しています。
●P≠NP問題
「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうか確かめるのとでは、どちらが簡単か?」 実際はアルゴリズムとかが関るもう少し複雑な問題のようですが、文章で表すとこうなるようです。小説中のキーとなる言葉です。これはれっきとした数学の問題で、100万ドルの懸賞がかかっているほどの超難問中の難問です。
この問題を実社会に当てはめると面白いです。自分で仕事を完成させるのと、人のした仕事をチェックするのはどちらが生産的か? 起業するのと会社を引き継ぐのはとどちらが効率的か? 自分で考えた新しいビジネスをするのとある完成されたビジネスを自分なりにやるのとではどちらが成功率が高いか? 「P≠NP問題の理解が足りない、または実社会に当てはめることに無理がある」と言うことはあるでしょうが、考えてみると面白い問題になりそうです。